品種改良の方法

品種改良の方法

育種の種類

 

 遺伝的形質を利用して生物を改良し、 新しい有益な品種を育成することを育種といいい、育種には「分離育種」、「交雑育種」、「倍数体育種」、「突然変異育種」等があります。

 

分離育種法

 

 もともとあった稲の品種の中から目的に合った優れた特徴を持つ稲を見つけて選ぶ方法で、明治36年に本格的な品種改良が始まるまで行われていました。しかし、この方法では同じ性質を持つ品種になるように「固定」されず、種を収穫して、又栽培しても全く同じ特徴をもった品種になるわけではなく、少し違った特徴をもった稲が出来ていました。 

 

 本格的に品種改良が行われ るようになるまでは、この方法で熱心な農家が、自分の田んぼで見つけた変わった稲を増やして植え、少しずつ改良された稲が生まれていきました。本格的な品種改良が始まった当初も、農林省が全国から稲の品種を集め、この方法により元々あった品種の中から優れたものを選び出していました。その後、交雑(交配)育種法が始まり人工交配が主流となります。

 

 

交雑(甲ばい)育種法

 

 現在、わが国で行われている米の品種改良の主流で、遺伝的に異なる優れた特徴を持つ品種同士を人工交配によって組み合わせる方法で「交配育種法」ともいわれています。分離育種法では、自然に特徴のある品種ができることは稀であるし、目的に合ったものを意図的に作り出すことはできません。そこで、目的に合ったお米を作るために、違った良い特徴を持った品種の稲を掛け合わせて良い品質の稲を作っているわけです。 

 

 稲は風媒花のため、稲の花は自分のめしべに自分のおしべの花粉をつけて実をつけ自家受粉します。稲の花が咲くのは午前中のわずかな間だけです。また、開花するまでに自家受粉してしまうものもあり、交配させるために別な稲の花粉をつけるためには 自家受粉する前におしべを取り除くか、稲の花を お湯に浸けておしべの花粉をダメにしてめしべだけを生かしておきます。

 

 実際には「温湯除雄」と言って、稲の穂を43℃のお湯に7分間浸けておくと、おしべの花粉は働かなるが、めしべは元気な状態のままでいるため、開花直後にめしべに別の品種のおしべの花粉つけると実をつけるそうです。 こうしてできた種は、、父であるおしべの花粉の性質の品種と母であるめしべの品種の性質との両方を持った新しい性質の稲になります。しかし、交配により最初にできたF1種子(雑種1代目:雑種のほうが純系より優れる雑種強勢を利用した種)からは、いろんな性質の稲ができ安定していないため、種を繰り返して植え、F2種(雑種2代目)→F3種(雑種3代目) →F4種(雑種4代目)と育てます。

 

 こうして育てた雑種4代目の中から性質の良いものを選抜し植えます。これを繰り返すことにより何代目かからは安定した性質を持った稲が出来るようになります。これを固定または固定すると言い、良い性質をもっており、その良い性質が変わらないようにします。固定するまでは選抜を7〜8回繰り返します。このため、新しい品種のお米を作るためには7〜8年の年月がかかりますが、最近では、世代促進 技術により温度管理や照明の調整をすることにより、1年に2〜3回稲を作れるようになり、約3年その期間は短縮されています。

 

 

倍数体育種法

 

 染色体を通常の2倍体より多くもつ倍数体を人工的に作製する育種法。半数体を倍加する倍加半数体を利用する半数体育種法もあります。植物の倍数体には、同質倍数体と異質倍数体とがあり、農作物の遺伝的改良には、三倍体や四倍体で細胞、、器官、植物体全体が大きくなる傾向がある同質倍数体が利用されています。倍数体は多くの場合、個体全体または器官の大きさが増大します。

 

 

突然変異育種

 

 突然変異には自然突然変異と人為突然変異がありますが、紫外線やX線等の放射線とアルキル化剤やアジ化ナトリウム等の化学物質を変異原として人為的に品種改良が行われています。突然変異は自然界でも低い頻度で生じますが、その発芽確率は1遺伝子で1世代当たり、およそ10万?100万分の1のため、品種改良のために利用するには発生頻度が低すぎます。このため、異体を得て、有用なものを選別していく放射線育種法が主に行われています。

 

 放射線育種は、放射線で突然変異を起したものそのものが品種となる場合と、別の品種を掛け合わせる事により品種として成立させる場合があります。放射線により突然変異を起す方法としては「生物に放射性同位元素を吸収させ内部照射させる方法」、「強い粒子線を外部から照射し、生体内の原子を放射化させる方法」と「強い透過力を持った放射線を外部から照射する方法」があり、現在は3番目の手法が多く用いられています。

 

 放射線育種によりできたお米として、日本では昭和41年に「フジミノリ」から作られた「レイメイ」(突然変異育種法の「黎明」の意味)が有名です。「レイメイ」は、出荷量で日本一になったこともありましたが、食味がいまいちだったことから食味のよい品種に押されて衰退しました。しかし、その優れた突然変異遺伝子は「アキヒカリ」、「アキチカラ」、「コイヒメ」をはじめとして多数の子孫品種に伝えられています。このほか、粳米の「トヨニシキ」からモチ突然変異体を選抜して作られた「ミユキモチ」があります。

 

出典:農林水産省
    (https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/culture/rekishi.html)
    (https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1111/spe1_01.html)

 

 

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